ゴーマンはどっちか
平成六年(一九九四)五月中旬。SPA!で人気連載中だった「ゴーマニズム宣言」の小林よしのり氏と、彼が会う事になった。その前に彼から電話。
「小林よしのりって、どんなマンガ書いてる人ですか?」
ちなみに彼は、一冊のマンガも読んでいない。水木しげるやつげ義春どころか、手塚治虫一冊読んでないのというのは、日本人には一人もいないはずだ。彼は、母がマンガを与えてくれなかったから、と言うが、世間はそれでも隠れて読んでいたものだ。彼は、自分のマイナス面は、常に人のせいにするという性質を持っている。
人を食った事でさえ、幼い頃に歌手である叔父の佐川M男が人食いゴッコをして遊んでくれたからだ、などと言う始末である。こうした彼の性格は、また後々詳しく書くことにする。
「小林よしのりは僕、大ファンなんですよ。会うんですか。わあ、羨ましいなあ。美人秘書が一緒に来ると思うから、対抗して私の美人秘書を連れていきますか?」
私は、我が事のように喜び、小林よしのりが「東大一直線」以来、「いろはにほうさく」や「おぼっちゃまくん」など、数々の名作を描いていることなどを説明した。
そして会って対談し、何事もなく紳士的に別れてきたと言う。
ところが、二週に渡ってSPA!に連載された自分の回を見て彼は激昂(ゴーマニズム宣言6、105、106話に収録)。すぐ電話が。「あんなこと言ってないのに勝手に描かれた。しかも自分はあんな馬ヅラのくせに良い男に描いて、私をあんなブ男に描いて許せない!」
私は吹き出しそうになった。よしりんの自画像はともかくとして、あの回での彼は実に良く似ていたと業界でも評判だったのだ。
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