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３
「そう、たった一度だけだったね。シャワーを浴びたのは」
私は、見えないポロンに語りかける。
そう、ノミには閉口したものだ。ノミに足ばかり食われ、寝ていても痒くて仕方がなかった。
ノミ取りシャンプーを買い、バスルームに閉じ込め、まずは首のまわりにシャンプーをつけ、身体から洗い、逃げ回るポロンを空のバスタブに入れ、頭から身体中にぬるま湯を浴びせたっけ。
ポロンはニャーンと情けない声をバスルーム内に響かせ、シャンプーを洗い流して解放してやると、窓際の日向へ行って濡れた身体中を恨みがましく舐めていた。
しばらくはポロンの毛はシャンプーの良い匂いがしていたけど、その時の暴れようで私の足はかなり傷つき、以来二度とシャワーを浴びせようという気にはならなかったのであった。
ノミ退治は、ノミ取り櫛でマメに取っていたが、きりがないので、結局ポロンと一緒に書斎に避難し、ダニアースを焚いた。効果てきめん、それを二度繰り返しただけで絶滅。不思議にもポロンの身体についていた分まで完全に退治できた。
あと二年めだったか、一度だけ、吐いてばかりいるので心配し獣医に連れていったことがあった。獣医でも大暴れし、お尻に体温計を入れられ、さらに抗生物質を注射。まあ、その時は何事もなく済み、以来病気一つしない親孝行な子になった。
そして「猫の手帖」にエッセイが載り、さらに年間を通じての大賞を受賞。賞金三万円は愛護会に寄付。
そのことで、ＮＨＫが取材にきた。
ポロンのおかげで、初めてテレビ出演。ほんの十分足らずだったが、多くの人に観てもらった。
写真は多く撮ったが、その番組のビデオが唯一、動いているポロンの映像となる。
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