今年も師走がやってきた。
 昨年の大晦日、ポロンが死んでからもう丸一年近く経つんだなあ。
 ポロンとは、茶トラの雌猫。私が、この世で一番愛情を注いだ生命体である。
 ポロンが死んだ瞬間から今日まで、私は一度も泣かなかった。泣いたのは、むしろ衰弱して苦しむポロンを膝に載せていたときだった。十年以上、一緒に暮らしていたポロンが死ぬなど、信じられなかったし信じたくもなかった。
 しかし、とにかくこの一年、ポロンはこの部屋から姿を消してしまったのだ。まあ、まだ冷蔵庫の上に骨はあるし、見えないけど居る気配はあるのだが、やはり撫ぜたり抱いたりしたい。
 かといって、ポロンの生まれ代わりを探し、二代目ポロンとしてもう一度飼いはじめるには、初代のポロンのことを何一つ文章に残していないのだ。
 ここは一つ、モノカキの性として、書かなければならない。しかし書こう書こうと思いつつ、結局一年近く経ってしまったのは、書けば泣いてしまうから、それが嫌でズルズルとためらっていたのである。
 それでも、ようやく書き留めておこうという決心がついた。
 では、見えないポロンを膝に載せ、十数年前のことから綴っていこう。

前のページ | 未発表作品トップへ | 次のページへ